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空間を揺らすスピーカー

昔通っていたジャズ喫茶でその音圧に圧倒され部屋の空気を揺るがす?ような感覚を覚える事は度々あった。最近のジャズ喫茶は(ジャズ喫茶そのものを見かけなくなってきたが…)BGM的に静かにかかっている事が多い これも時代の変化なのだろう。オーディオと知り合ってまだ年数は少ないがオフ会などで他の人の音を聴くケースもある、総じて爆音派の人は少なかった 音場が綺麗に出 そこに奏者が演奏しているかのような音像のようなものが現れるなどかなり音場や定位に拘りをみせている様子がうかがえる。

オーディオの音は幻想だと常日頃から思っている。生の音ではない作られた音である 録音された時の音は生からだがそれ以降はどうしても作り物になってしまう。
音場や音像をリアルに出すのが究極のような風潮があり もちろんそれには異議はないし そんなリアルに出るのならは楽しくワクワクしてしまうのかもしれない。

エレクタ・アマトールの第一声を聴いた時 「空間」が揺れる感覚を覚えた。それは大きな音を出して音圧で「空気」が揺れるという感じではない。
音像なんてハッキリしない 演奏者がそこにいるような感覚もしない 包み込むようなフワーッとした感じでもない 空間が揺らいで何となくそこから音楽が流れてくる…
今まで聴いた事がない感触である。「音場がスピーカー間に広がり奏者がリアルに演奏している風に聴こえる」 そういうオーディオが素晴らしいものだとしたらこのスピーカーは落第である。

このスピーカーはオーディオの音が幻想である事を分かっている。そこで敢えて幻想的な幻のような音を出す アブストラクトな音と言ってもよいだろう。
作者のフランコ・セルブリンも出来上がった作品(スピーカー)の音を聴いて困惑したと思う とんでもない物を造ってしまったと…
エレクタ・アマトールの次に世に送り出したMinimaはごく普通のスピーカーでこのアマトールを聴いた後だと ある種ホッとする。その明るい音色はイタリアの風土を思い起こす 狭い部屋だけではなくある程度の広さがあるリビングでも浪々と鳴りその筐体から考えられないほど低音もでる 音楽性のあるとても優秀なスピーカーである。そのMinimaを更に洗練させたのがリファレンスとして発表されたガルネリ・オマージュだ。

実はアマトールを購入する時 この最高峰のガルネリ・オマージュも選択肢にあった。ちょうど良い出物がありアマトールとどちらにしようか迷った。
価格的にはガルネリがアマトールより数段高価だったがかなりの値ごろ感はあったものの結局アマトールに決めた。
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アマトールはどんな音楽もその中の情念を音として再生させる作為的なスピーカーである 性能的には現代の高精細なスピーカーには敵わない 低音もかなり出るとはいえ甘さと緩さが目立つ  悪い言い方をすると締りのない低音である。特にキタサン部屋の狭い空間だとボンつきが時々発生し聴感上不快な時もある そういう時は普通の感覚として何とかしようと試みるし 今までもそうしていた しかし今このスピーカーから鳴る音楽を聴いているとそんな事はどうでもよいと感ずる。
Minimaで聴いていた時CDの音は少しきつめに感じていた アナログライクに鳴るCDプレーヤーであったがそこはやはり本当のアナログに敵わない。アマトールで聴くCDもレコードもアマトールの音に毒されてしまいアマトールの音色に変わってしまう。あれほどアナログオリジナルの音に魅了され(今でも変わらないが…)ていたが選ぶ音源、ソースはアマトール色に染まってしまう このスピーカーを所有する限りもうアナログのオリジナルには拘らなくなってしまうような気がするし そうなりつつある。

空間を揺らし別世界に連れていかれる様な不思議な感覚を覚える唯一無二のスピーカー「エレクタ・アマトール」愛着を覚えるどころか恐ろしいスピーカーである。
故にMinimaは正常心を保つ為傍らに置き時々聴くようにしている…異空間に放たれ戻ってこられないそんな状況にならないようなストッパー的な存在でもある。


by kurama66644 | 2018-03-18 09:23 | オーディオ | Comments(0)