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ザッツ・ナット

どうもこれまで誤解していたようで申し訳ない気持ちである。

それはアルトサックス奏者キャノンボール・アダレイの実弟でナット・アダレイの事である。

兄貴の派手さに対し控え気味のナットはコンポを組んでも いつもキャノンボールの陰に隠れて演奏している?イメージを持っていた。
自身は作曲も積極的にやり「ワークソング」など有名曲も作っている、自身のコンポでも音色が今一つ暗い感じであったが それはコルネットを吹いていた事もあるのかもしれない。よくコルネットはトランペットより丸みを帯びた 柔かい音色がすると言われている、実際キタサンも趣味でサックスとコルネットを吹いていた時期もあるが確かにトランペットと比べると角が取れた音色が出るが あくまでもトランペットと比べると と言う話でメーカーやその人の吹き方により音色は多少違ってくるものである。

その兄貴が早逝して 残されたナットは暫く元気がなく低迷していた。晩年になってキャノンボールを彷彿させるアルトサックス奏者 ビンセント・ハーリングを自身のコンポに置いてから元気を取り戻し活動を積極的に行うようになった。

亡くなる前にビンセント・ハーリングを伴い来日した時 そのライブに行ったが確かに元気ではあったがジャズの熱さが今一つ感じられなかった。
それよりもドラムのこれまたレジェンドともいえるジミー・コブのドラミングに魅せられてしまった(笑)。まぁ歳だからしょうがないし、当時若手だったビンセント・ハーリングに華を持たせたのかなぁとも思い その会場を後にした。

それから約10年後 キタサンは何故か?オーディオの道に進み このナット・アダレイのリーダー作、ならびに参加作を聴く事になったが 同時期のトランぺッター達とは違い 押しが弱いと感じられずにはいられなかった。


先日レコードを整理している時 たまたまこちらのアルバムを見つけた。
ザッツ・ナット_b0323858_11475402.jpg
ちょっとピンぼけ気味だがナット・アダレイの初リーダーアルバム「That's Nat"」サボイ 55年モノラル盤である。
相変わらずサボイは地味なジャケットでその辺はブルーノートやリバーサイド辺りと比べるとジャケットで損をしている。ジャケットにお金をさくのはもったいないと言う会社の方針なのだろうか? でもサボイはバンゲルダーなど優秀なエンジニアを使い 音は良い!質実剛健なメーカーなのである。

そういえばこのレコードまともに聴いた事なかったなぁ~と思い ターンテーブルに針を落とした。
その時である これまで聴いた事がないようなナットのコルネットの咆哮がさく裂していた。共演のジェローム・リチャードソンのサックスもこれまた良い、バックはサボイのお抱えトリオ ハンク・ジョーンズにウェンデル・マーシャル、ケニー・クラークである。「おーっ こんな硬派なハードバップな吹き方も出来るんだ、しかも音が暗くない 溌剌としている※ちょっとリズムは古いかなぁ~」 思わずニンマリしてしまい。長年抱いていたナットの印象が覆る瞬間でもあった。

やれば出来るのに わざと自分の全開の姿をだしていなかったのだろうか? 兄貴のキャノンボールに華を持たせ、自分のリーダー作でも共演を引き立たせ、亡くなる前まで今度は若手の引き立て役の立ち位置で生涯を終えた。

唯一 本来の自分の素の姿を遠慮なくさらけ出す事が出来た?この作品を長い間 レコード棚にしまいこんで聴いていなかった事を申し訳ないと思いつつ 現在じっくり聴いているキタサンであった。

「That's Nat""」 これがナット・アダレイさ!



by kurama66644 | 2016-09-25 08:22 | ジャズ | Comments(0)